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2021.08.07

ここがどこにでも行ける空港であるということ(あるMVを観ての小記述)

父方の祖父は、空港が好きだった。私たち姉弟は小さいころ、よく空港に連れて行ってもらった。飛行機に乗るわけではない。空港のテラスから、ただ飛んで行く飛行機を眺めるのだ。

 

祖父は飽きることなく空港に私たちを連れて行っては、テラスから飛行機を眺めた。

私の記憶やイメージからすると、祖父はけっして旅好きな人ではなかったように思う。あるいは、彼はほんとうは旅好きだったのだろうか。もしそうだとしたら、祖父を空港のテラスにとどめていたものは、その、旅にあこがれた彼自身だったのかもしれない。

 

あるMVを観ていて、祖父といた空港のテラスを思いだした(空港感にあふれるビデオだったので)。あの頃、まだ空港は古く、埃っぽかった。私はどこにも行けなかった。あまりにも小さかったし、私にとって世界は、ぼんやりとした大きな水たまりだった。それ以上のものでも、それ以下のものでもなかった。私はただその水たまりをぼんやり眺めていた。

 

いま、あのテラスに戻ってみると、何が起こるだろう。私をどこかにつれて行ってくれるはずのものは、まだあのテラスに残っているだろうか?私の中にまだ残っているだろうか?そんな考えが、MVを観ているうちに、とりとめもなくあたまに浮かんだ。

MVの中では、まばたきする間もなく場面が切り替わる。彼らが腕を振れば彼らの着ているものが変わる、彼らがまばたきをすれば彼らのいる場所が変わる、天気が変わる。そのことがなぜか、私をかぎりなくなぐさめた。

 

燃えるような景色が見たい、といま私はつよく思う。それがどんなところにあるにせよ、見てみたい。まだ見たことのないものを見たい。彼らの動きは、その景色がどこかにかならずあるということを指し示し、私を空港のあのテラスへと、物語へと連れ戻してくれる。

 

 

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むかしのお風呂。

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タイルがかわいい。

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ちょうど良い光。

 

 

 

 

 

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