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2020.02.29

東京の空

あなたは立っていた 東京の街に ひとり

ながい間わたしが 行かなかった街

ずっと 行きたかった街

わすれかけていた街

そこにあなたは 鮮やかに立っている

その小さなからだで 都会を抱え

涙を抱え 故郷を抱えて

ここにいるあなた以外に

東京なんてないのではないか

気がつけば 雨が降っている


きょうは雨だ。午後になってもなかなか止まない。わたしには、雨の日に特別好きなことがある。それは、どこかの道端で、さびれた屋根の下で、ふいにタバコに火が灯るのを見ることだ。その小さなオレンジ色の火に心をうばわれてしまう。

 

何日か前に、ある出会いがあり、その縁、といったらよいのだろうか、何か一見すると信じがたいものがつながって、一冊の本の話になった。わたしはとつぜん飛び出したその本と作者の名前を、ずっと前から知っていた。小山田咲子さんの『えいやっ!と飛び出すあの一瞬を愛してる』(海鳥社)だ。そっと本をひらく。

 タイトルを一目見た瞬間から、この本はわたしのお守りのようなものだ。このひとの言葉は、どんなことを書いていても、うつくしい。純粋なのとはちょっとちがうのだけれど、ものごとをまっすぐに見ようとする眼差しをもっている。その眼差しは、知らず知らずのうちに、わたしたちに勇気を与えてくれる。考えたこと、感じたことを、恥じらいながらもまっすぐに口にできる、強さ。たどたどしくてもかまわない。まっすぐに前を向くことのできる透明さ。ものを書くということの、かけがえのなさ。そうだ、何かを書くということは、こんなにかけがえのないことだったのだ。わたしは今日も、たどたどしくも何かを語ろうと前を向いている。

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愛のつくしんぼ

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